先日、日本弁護士連合会で、公設事務所の弁護士を対象とした農地法の講義をしました。私は、普段、農地に関する法律相談を受けることはありますが、講師をするのは初めてだったので緊張しました。
講義では、まず農地をめぐる現状、農業政策の基本的な考え方、様々な農業関連法令がある中での農地法の位置づけについて、時間をかけて解説しました。実際に弁護士が関与する分野は、権利移動、転用、賃貸借がほとんどだと思います。実務的な分野を順番に淡々と解説すれば、一応、講義のかっこうはつくはずです。しかし、単に個々の条文の解釈論を勉強するだけでなく、全体像、背景をよく理解しなければ、知識の詰め込みになってしまい、応用がきかなくなります。講義の準備を通じて、自分自身も頭の整理ができたと思います。
続いて、農地法3条から5条の解説、賃貸借の解釈論を講義しました。事前のアンケートによって、受講者の知識・経験は様々だということが分かっていました。ここで最小公倍数的に何でも盛り込んでしまうと、時間がいくらあっても足りませんし、情報過多で受講者の集中力が切れてしまう恐れがあります。他方、最大公約数的に準備をすれば、当たり障りのない内容となってしまい、メリハリがなくなります。どの講義でも同じことが言えますが、悩ましいのは、限られた時間の中で、どこを思い切って捨てるかということです。
最後に質疑応答の時間を設けました。これまで何度となく講義をする機会がありましたが、この質疑応答の時間は一番緊張します。もちろん、自分が全く知らないことについて質問が出たらどうしようという漠然とした心配もあります。しかし、それ以上に、受講者の質問内容をみれば自分の講義が上手くいったかどうかが分かるということです。極論を言えば、上手くいったときには質問は出ません。しかし、上手くいかなかったときには「あ、それを言い忘れていました。ごめんなさい。」と補足することになります。今回は少し応用的な質問が出ただけだったので、ホッとしました。
講義は、何よりも自分にとって大変勉強になります。今回もよい機会に恵まれたことを感謝しています。
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農業経営アドバイザー
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