大切な日に

先日、公正証書遺言を作成しました。

ご本人の体調を考慮し、公証人に出張をお願いして、公証役場ではなく、ご本人のご自宅で作成していただきました。

まず、公証人がご本人に分かりやすく手続きを説明してくださった後、公正証書遺言には「口授」(民法969条1項2号)が必要となりますので、ご本人が、遺言内容について、その理由も含めて公証人にご説明しました。その様子を2人の証人(同条同項1号)が見守りました。

ご本人が身分証明書、筆記用具、ご印鑑だけでなく、試し押しするための紙や署名するための下敷まで、丁寧に準備していらっしゃることに全員が感服するなど、終始、温かい雰囲気に包まれて、遺言は完成しました。

私は、ご本人の優しいお人柄や、ご本人が相続のことで随分と悩んでおられたこと、当日も朝から緊張なさっていたことを知っていました。そのため、多くの方がご本人のために集まり、ご本人も安心したであろう和やかな雰囲気の中で遺言が作成されていく様子を見て、涙が出そうになりました。

公正証書遺言は公証役場で作成しますが、きっと本当は、遺言書というものは、ご本人の住み慣れたご自宅で、こんなふうにして作成されるものであったのではないか、とも感じたのでした。

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