会議のあり方を考える

 今年度は弁護士会の役員だったこともあり、会の中と外の両方で、例年以上に多くの会議に出席してきました。理事会,委員会、協議会、懇談会、プロジェクトチーム(PT)、ワーキンググループ(WG)など名称は様々ですが、複数の人達が集まって物事を決める、検討する、報告するという点では、どれも会議の一種だと思います。ここでは、多数の会議に出席し、会議のあり方について感じたことをまとめてみます。

 会議に参加すると、次のような感想を持つことがあります。
「たったこれだけのことを決めるのに、なぜこんなに時間がかかるんだろう。」
「どうして、こうもたびたび議論が脱線するんだろう。」
「この人、一体いつまで話すつもりなんだろう。」
「この人、キーパーソンなのにいつも遅れてくるなぁ。」

 まず、根本的な問題ではありますが、雑談のようになってしまう会議が意外とあるように見受けられます。特に出席者がよく知っている人同士である場合、気が緩んでしまうせいか、会議は会議でも「井戸端会議」が始まってしまうこともあります。他の出席者に感想を聞いてみると、多かれ少なかれ、私と同様の感想を持つ人がいるようです。ということは、出席者の誰もが容易にこの問題点に気づいているはずです。しかし、なかなか改善されないのはなぜでしょうか。

 私は、会議にも、あらゆるスポーツと同様、厳格なルールがあり、次のようなことを徹底すれば、相当程度、問題点は改善されるのではないかと考えています。

1 議題・議案とその所要時間を決めておく
  ほとんどの会議では、議題・議案が決まっていて、事前に又は当日にこれが配布されます。式次第に沿って会議を進めるのですが、所要時間まできちんと決めておかないと、ズルズルと会議が後ろにずれ込んで、重要な議題・議案を検討する時間がとれなくなる場合があります。会議の展開によっては、多少時間が長引いたり短くなったりすることは致し方ありませんが、時間的な目標を決めておくことで、会議の緊張感は大きく変わると思います。

2 決議事項、検討事項、報告事項を明確と区別する
  会議で検討することは、大別して3つです。会議体として決めなければならない事項、広く意見交換をしながら問題意識を深める事項、主宰する側が出席者に対し一方的に報告する事項です。これらを明確に区別しておかないと、出席者は今何をしているのか分からなくなります。例えば、決議をする場なのにとりとめのない意見ばかりが出たり、主宰者が報告しているだけなのに、ああすべきだ、こうすべきだと要望ばかりが出たりする場合がそうです。本来であれば、出席者は、何かを決める場面であれば、そのつもりで会議に臨みます。意見交換するだけであれば、自由に意見を述べるつもりで会議に臨みます。報告を受けるだけであれば、大切なことを聞き漏らさないという心構えで会議に臨みます。出席者のためにも、主宰者は、会議で何を検討するのかを明確にしておくべきです。
  
3 長時間発言させない
  人はそれぞれ話すペースがあります。前置きから網羅的に話す人もいれば、要点だけをピンポイントで話す人もいます。話し方も人それぞれです。滑舌がよく論旨が明快な人もいれば、熱意は伝わるけれども何を言っているのか分かりにくい人もいます。しかし、会議は限られた時間で開催されます。特定の人が長時間発言すると、それだけ他の人の発言する機会が失われます。会議はできるだけ多様な意見を吸い上げる必要がありますので、特定の人が長期間話し始めたら、司会者は、勇気を出してこれを遮ることも必要ではないかと思います。

4 遅刻厳禁、遅刻者は話を蒸し返さない
  同じ社会人でも、人によって時間の流れは違います。絶対に時間を守る人もいれば、必ずと言ってよいほど遅刻する人もいます。遅刻する人は、他の人を待たせることで、その人の時間を浪費させていることについて自覚の薄い人ではないかと思います(ただし、これは自分自身に対する戒めでもあります。)。会議との関係でいえば、議題・議案の検討が終わった後、キーパーソンがやってきて、話を蒸し返すということがしばしばあります。しかし、遅刻した人は、もはや検討が終わった議題・議案について発言する権利はないというべきです。遅刻した人は、静かに現在進んでいる議題・議案に集中するしかないのです。

5 司会者がしっかりする、司会者に従う
  気心の知れた人同士の会議は、どうしても雑談になりがちです。しかし、そのようなときこそ、会議を運営する司会者の指示には絶対に従うべきです。会議によっては、司会者以外に声の大きい仕切り屋がいます。しかし、その人が好き勝手に喋り出すと、予定されていた議題・議案をバランスよく検討することができず、その人のスタンドプレーばかりが目立ち、結局、雑談のようになってしまいます。司会者が毅然と対応する必要もありますが、会議の出席者は、全員、司会者の指示には絶対に従うというマナーを身につけるべきだと思います。会議の司会者は、スポーツでいえば審判のような絶対的な存在だからです。

6 簡単でよいので議事録を残しておく
  連続して開催される会議については、前回どのような議論をし、どのような結論に至ったのかをしっかりと確認しておくべきです。というのは、既に決めたことをその場の雰囲気で蒸し返していては、何のために時間をかけて会議をしたのか分からなくなるからです。ある出席者が「確か前回こうなったはずだ」と思いつきで発言し、他の出席者も記憶だけを頼りに「そうだったかも知れない」と納得し、間違った認識の下、会議が進んでいくということがあります。このようなことがないように、必ず、前回の議事録は今回の会議のために用意しておくべきであり、一度決めたことは、よほどのことがない限り蒸し返してはならないと思います。

【関連エッセイ】
弁護士会の活動を見渡して
副会長の仕事
弁護士の会務

目次