安保関連法成立の意味

 2014年7月1日、内閣は、従来の憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定をしました。必要に応じて憲法9条が定める枠組み(少なくとも政府自身がそう解釈してきた枠組み)を乗り越えたわけですから、立憲主義、つまり憲法に基づき権力の行使をするという原理原則を破壊したといえます。

 そして、2015年9月19日、今度は国会が、この閣議決定を踏まえて提出された安保関連法案を可決し、法律が成立しました。連日報道されたとおりです。国会が憲法違反の法律を制定することはできませんので、今度は、国会が、立憲主義を破壊したといえます。

 世論調査によれば、安保関連法案に反対する意見が、賛成する意見よりも大幅に多く、少なくとも今国会で成立させるべきではないとの意見が大多数を占めていました。立憲主義を破壊したという点において、特に法律家や研究者からは、次々と憲法違反であるとの意見表明がなされました。一部では、左翼活動家だけが法案に反対しているかのような声もあったようですが、現実を直視すれば、全くそうでないことは明白です。様々な論点が浮き彫りとなり、インターネット、新聞、テレビ等を通じて法案のどこが問題かをよく理解した上での世論ですから、国民の答えは「ノー」だったといえます。

 反対意見が渦巻く中、法案の可決を急ぐ政府与党の姿に、戦前戦中の日本の姿を重ね合わせると、この安保関連法成立が何を意味するのかが見えてきます。

 まだ、実際に自衛隊員が、戦闘行為に伴い、誰かを殺害したり、誰かから殺害されたりしたわけではありません。引き返すことはできます。そのために、一法律家として何ができるのかを、今一度よく考えたいと思います。

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