ロサンゼルス(その2)

ロサンゼルスで、印象に残ったのは裁判所での法廷傍聴です。ハーグ案件を含め、10件近くの案件を傍聴することができました。

傍聴した案件の当事者の半数以上は、イスラエル人夫婦やメキシコ人夫婦といった外国国籍であり、通訳人が付き添っている方がほとんどでした。また、当事者に代理人弁護士が選任されていたのは約半数で、それ以外の方はいわゆる本人訴訟でした。ハーグ案件、親権・面会交流の案件、裁判官から調停(mediation)に付された案件など、事案も様々でした。

カリフォルニア州では、検察官(DA,district attorney)が、ハーグ案件について、刑事手続のみならず、民事手続に中立の第三者として関与するのが特徴です。日本における家庭裁判所調査官に似ているのですが、裁判官が判断するにあたって、必要な事実を調査して提供する役割を果たしています。裁判にも立ち会います。

また、子を連れ去った親が、子の所在を隠そうとしたケースなどでは、裁判所の許可を得たうえ、子に学校等で接触し、裁判を行うために、検察官のオフィスや裁判所の専用部屋に子を連れてくる権限を有しています。人身保護請求事件で、被拘束者を審問時に裁判所に待機させるようなイメージです。子を連れ去った親が裁判所に出頭しなければ,検察官の権限を行使して、逮捕することもできます。そして、子の返還命令が出された場合、子を連れ去った親から子を引き離す場面でも検察官が立ち会うようです。このように、検察官が広範に関わっていますので、州検察には、子の連れ去り案件に精通した検察官が所属する専門部署があります。

傍聴したハーグ案件は、子の母親を殺した父親によって、監護権を有するメキシコの祖父母宅からアメリカに連れ去られた子について、メキシコへの返還が求められた案件でした。父親には交際している女性がいますが滞在資格に問題があるらしく、父親は服役中です。そして、子は、祖父母の暴力を主張してメキシコへの返還を拒んでいました。現状のままでは、メキシコに返還されとしても、返還拒否事由が認められたとしても、子が落ち着いた生活ができるとは思えず、何が子にとって最善の利益なのかが悩ましい事案でした。

ロサンゼルスでは、検察官が法廷に付き添ってくださったのですが、その検察官が、リノの女性弁護士さんと同様、素敵な女性でした。親切で温かく、とても前向きで、親子の問題を取り扱うのであれば、このようでいなくてはと思ったのでした。

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