県下の弁護士有志を中心に「愛知刑事弁護塾」を立ち上げました。足繁く塾に通う年代ではないのですが、この塾の目的は個々の刑事弁護の理論と実践を高めるところにあるので、まさに塾と呼ぶにふさわしい集まりです。具体的には、優れた研究者や同業者の講義を受けたり、塾生からの事例報告をもとに全員で議論したり、各人が入手した最新情報を共有したり、といったことを積み重ねていく予定です。
刑事弁護は、孤独な世界です。一部の弁護団事件を除き、基本的には一人で考え、しかも即断を求められる場面が少なくありません。また、個々の弁護士が扱うことができる事件には量的な限界もあります。正確に数えたことはありませんが、19年目の私でも、これまでの担当件数はせいぜい300件から400件の間くらいです。日常的に刑事事件ばかり扱っている検察官や刑事部の裁判官に比べると、まだまだ少ないといえます。それに、検察官や裁判官には組織のバックグラウンドがありますから、情報共有という点でも万全です。この差を埋めるのは、容易なことではありません。
先日、第一回の例会が開催されました。事例報告とともに塾の運営方針についても話し合いましたが、塾生からは実に多種多様なアイデアが出され、私自身、新しい発見の連続でした。それと同時に、刑事弁護の精神を共有する者が求めているものは、実はほぼ同じだということを実感しました。塾にはキャリアや肩書きは不要で、変なしがらみもなく民主的に運営されているので、自由闊達な議論が期待できそうです。
これからは「愛知刑事弁護塾」を通じて、この地域の刑事弁護の発展に貢献していきたいと思います。