弁護士会照会調査室の仕事

 証拠を集めて正確な事実を把握することは、弁護士の仕事にとって非常に重要です。私たちの日々の仕事は、どのような証拠があり、その証拠からどのような事実が認められるかという思考の繰り返しといっても言い過ぎではありません。この思考回路がスムーズに機能しなければ、いくら法律(条文)を勉強していても、それを生かすことができません。

 ところが、一人一人の弁護士は、機動力に限界のある民間人です。機動力という点では、例えば、多くの記者を抱えて大きな資金力をもつマスコミと比べれば一目瞭然です。弁護士個人の調査には限界があります。また、民間人という点では、例えば、強制捜査(逮捕、捜索など)の権限をもつ警察と比べればよく分かります。弁護士個人にとって見ず知らずの人から聞き込みをすることさえ、とても苦労します。

 ここで、弁護士の強い味方となるのが弁護士会照会です。弁護士法第23条の2には次のように書かれています。
1 弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があった場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。
2  弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

 つまり、個々の弁護士は、所属する弁護士会(私たちの場合は愛知県弁護士会です)を通じて、公的機関(例えば市役所、警察署、各官庁)や企業(例えば銀行、保険会社、電話会社)などに対し、照会つまり必要事項の報告を求めることができるのです。この弁護士会照会、オールマイティーな制度ではありませんが、利用の仕方によっては威力を発揮します。実際に、この照会に対する回答が裁判の重要な証拠になることもあります。

 ところで、私は、今年度から、この弁護士会照会に関する弁護士会の業務を担当する調査室員になりました。弁護士からの照会申出書の審査や、送付先から拒否回答が届いたときの対応が主な仕事です。少人数の調査室員で膨大な量の照会申出書を取り扱うため、今まで私が携わってきた会務の中でも相当大変な部類に属すると思います。

 しかし、他の弁護士の照会申出書や送付先からの回答を検討することは、大変勉強になります。今後の自分自身の仕事にも直接生かすことができそうです。それに、この照会制度を維持しさらに強化していくことは、何よりも弁護士全体の利益になります。

 確かにハードな仕事ですが、せっかく貴重な機会を与えて頂いたのですから、頑張りたいと思います。

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