リノでの最後の訪問は、NCJFCJ(National Council of Juvenile and Family Court Judeges)でした。これは、子どもが関係する事案を取り扱う裁判官を対象に、テキストの作成やトレーニングを実施している機関です。
テキストの一部を資料としていただきましたが、DVが関わる場合の子の親権・面会交流や虐待事案について、それらの定義からその危険性、証拠の評価方法、判断の指針などが具体的に記載されていました。テキストはカード式ですから、その都度、改訂されていくのだと思われます。
DVや虐待が関わるケースでは、子どもをDVや虐待の危険から守ることと、子どもの親へのアクセスを保つことのバランスが重要になります。しかし、このような事案では、当事者が激しく対立しており、裁判官にとっても判断に悩むところです。そこで、裁判官をサポートするということになるのです。
新鮮だったのは、そのテキストが、裁判官、心理学者、調停人、NPO、弁護士等によって監修されていることでした。日本では、弁護士が、裁判官向けのテキストを作成したり、裁判官をトレーニングしたりすることは、あまり考えられません。ですが、同じ問題に取り組むのであれば、それに関わる機関がそれぞれ違う視点を持ち寄ってより良い方法を考えるのは、本来望ましいことであるはずです。
NCJFCJという存在を知ったことも勉強になりましたが、面談してくださった弁護士が素敵な女性だったことも強く印象に残りました。彼女は、詳細な資料を準備したうえ、常に、私たちの知りたいことに合致しているかどうかを気にかけてくださいました。以前は、貧困地域でプロボノ活動をされていたとのこと、まるで太陽のように周囲を明るくする雰囲気の方だったのです。きっと、見たくないことも、たくさん見てきたであろう彼女の「私は、justice(正義)を信じている」との言葉はとても説得力があり、私たちはとても感動したのでした。