ロサンゼルスでの最後の訪問先であり、プログラムの最後となったのは、ロサンゼルス市警察(Los Angeles Police Department、略称LAPD)でした。ロス市警は、約1万人の警察官と約3000人の職員が所属している大規模な組織です。そういえば、あの有名な「刑事コロンボ」も、ロス市警の殺人課の設定でしたね。
私たちが面談したのは、ロス市警のJuvenile Departmentで、行方不明の子どもを調査することを専門にしてる部署でした。
行方不明の子どもは、大きく分けると、家出をした子どもと連れ去られた子どもです。そして、後者の内訳は、第三者による誘拐や殺人と親による連れ去りがあるのですが、親による連れ去りがその大半を占めています。
母親ないし父親から、他方の親によって子どもが連れ去れたとの通報があれば、ロス市警は、通報した親に対し、州検事(DA)に連絡するよう指示するとともに、最初のレポートを作成し、2時間以内にFBI(連邦警察)のシステムに登録をします。そして、第2のレポートとして、(1)子ども(2)子を連れ去った親に関するレポートを作成します。その後、州検事にレポートを提出し、捜査方法について検討します。州検事によって、親の行為が犯罪に該当すると判断されれば、州検事は裁判所に令状を申請します。
その後、親に関する捜査は州検事が行いますが、子どもの所在調査は、州検事のサポートを受けながら、引き続きロス市警が関与します。ハーグ案件については、インターポールで指名手配をすることもあるようでう。ハーグ案件に通じた警察官の数は、まだ少ないため、トレーニングに努めているとのことでした。
印象に残ったのは、多様な人種構成に対応するため、ロス市警では様々なバックグラウンドを持つ人材を採用していることと、連れ去られた子どもを保護するための部屋と、子を連れ去った母親のための部屋(取調室と思われます)を見学させていただいたことです。
子どものための部屋は、壁全体にディズニー調の愛らしい絵が描かれており、沢山のおもちゃが置かれていました。警察の建物内にあるとは思えない空間でした。そして、母親のための部屋には、通常の取調室のような机と椅子ではなくて、部屋全体が暖色系でまとめられ、椅子の代わりにソファーが置かれていました。壁には「Hope」などの言葉が描かれていました。子を連れ去った母親は犯罪者であると同時に、しばしばDVの被害者でもあります。そのような母親の事情にも配慮されていることに、人権意識の高さを感じました。
面談してくださったのは、子どもの所在調査に何十年も従事してきた方でした。自然に滲み出る温かさと、仕事に対する情熱が、法廷傍聴をご一緒くださった素敵な女性検事さんと共通していました。そのおかげで、私たちは,最後のプログラムをとても充実した思いで終えることができました。
最終日の午後は、翌朝の出国に備えてフリーでした。そこで、何人かの方にお勧めいただいた「ゲティ・センター」に出かけました。この美術館は、何と言っても立地が素晴らしく、カリフォルニアの美しい風景を360度満喫することができます。
3週間も滞在すると、アメリカの率直さや前向きさを心地良く感じるようになっており、英語にも慣れ、日本に帰ることが信じられないまま、翌朝、成田行の飛行機に搭乗したのでした。