相談者や依頼者の中には、面談に先立ち、事件のあらましや自分の考え、私に対する質問事項などを文書にまとめ、これを持参される方がいます。限られた面談時間を有効に使い、伝えたいことや確認したいことの漏れを無くそうと工夫されているのですから、このような文書を準備される方は、几帳面な方が多いように思います。これはときに非常に有効ですが、他面、面談のペースがつかみにくくなることもあります。面談より数日前に文書をお送りいただければ、事前に一読した上で面談に臨むことができます。
しかし、このような文書も、1、2枚程度であればよいのですが、相当量に及ぶ場合、当日その場で持参されると、相談者や依頼者の面前で時間をかけて黙読するのは、実際なかなか難しいものです。文書を用意される場合には、是非とも面談より前、できれば2、3日前までにお送りいただきたいものです(手紙だけでなくメールでもFAXでも構いません。)。
また、面談中に相談者や依頼者から、何度も「そこに書いてあるとおりです」と言われると、その都度、その箇所を黙読することになるため、面談の流れが遮断されます。法律問題を要領良く文書にまとめるには、相当な法律の知識と文書作成のトレーニングが必要です。面談前に用意された文書に何が書いてあるかを分析する時間があったら、目の前にいる相談者や依頼者から直接話を聞いたほうが効率が良いと思います。このような場合、私は、相談者や依頼者から「そこに書いてあるとおりです」と言われても、気にせずに「後で読んでおきますが、今は直接お話をお聞かせください」と言って、対話を優先するようにしています。
それでも、やはり事前に文書を用意いただけると、面談がスムーズに行くことが多いのは間違いありません。そこで今、刑事や家事など当事務所で比較的多く扱っている相談について、やや詳しい相談シートを用意し、相談前に記入していただくことを計画しています。スムーズな面談と相談者や依頼者に手間をおかけする点との折り合いをつけなければなりませんが、近いうちに試行的な運用を開始してみようと思っています。