昨日、日本弁護士連合会は、司法試験の合格者数を2010年頃までに年間3000人に増やす政府目標について、「法曹の質を低下させることになりかねず、当面は法曹人口増員のペースダウンが必要だ」として、増員の時期を遅らせるよう求める緊急提言をまとめました。
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/080718.html
この提言は、外部の人にはなかなか理解しにくいものかも知れません。なぜ弁護士は法曹が増えることに反対するのか。それは自由競争をしたくない業界のエゴではないか、という意見が多いようです。しかし、少なくとも、私の周りには法曹が増えること自体に反対する人はいませんし、自由競争になって困るという意見もないようです。本当の問題は、余りにも急激に法曹人口を増やしたため、今、弁護士の世界に「就職難」がおきていることだと思います。
司法修習を終えると、判事や検事になる人は別として、大半の人が弁護士に登録します。そして、ほとんどの人は、最初、どこかの法律事務所に就職して、経営者弁護士の仕事を手伝いながら給料をもらって仕事を覚えます。これが、いわゆる「イソ弁」です。私も、5年間、「イソ弁」をやりました。この「イソ弁」制度は、新人弁護士にとって大変重要で、弁護士の水準を確保するために必要不可欠な制度です。弁護士に登録したからと言って、いきなり仕事ができるものではありません。経験と実績を積んだ経営者弁護士(「ボス弁」といいます)から多くのことを学び、独り立ちしていくのです。私の場合も、弁護士のイロハは、全てボス弁から学んだと思っています。
ところが、今、新しく弁護士になる人の就職先がなかなか見つからなくて、大変なのだそうです。もともと法律事務所は限られた数しかないのですから、急激に弁護士を増やせば、当然、就職先の確保は難しくなります。一部を除くほとんどの法律事務所は、いわば零細企業ですから、1人、2人しかいないところに3人も4人も一度に新人を採用できるはずがありません。それでも、今、弁護士会では、新人の就職先を確保するため、必死に努力しています。さらに、最終的に就職できなかった人のために、弁護士になってからの研修を充実させ、新人の仕事上の悩みをきく相談窓口まで作ろうとしています。このことは是非知ってほしいのです。少なくとも、私の周りの弁護士は、新しく弁護士になる人を温かく迎えようとしており、自由競争のライバルだと言って敵視などしていません。皆、新人をきちんと育てることが、弁護士という職業に対する社会の信頼につながると考えているからだと思います。
法曹人口についても、今後、何回かに分けて書こうと思います。